ほんとのうた(仮題)
第3章 異常なる日常で
その様な顔で見つめられてしまえば、今更「さっさと寝よう」と惚けるのも流石に馬鹿らしく感じた。
夜は明日も明後日も、着実に訪れるものであるから。その度に同じく誤魔化すのではなく、ちゃんとした言質を尽くし得心させるべきだと考えたのだ。
俺は「はあっ……」と大きくため息を吐き、真の隣りに腰を下ろす。
「どうするって――真は一体、どうしたいんだ?」
「それは、わかんないよ。でもさ――」
「ん?」
「不自然なままなのは、なんか嫌だなって思う」
「不自然って、どこが?」
「オジサンは子ども扱いしてくれるけど、私だって大人なんだよ。ううん、たぶん普通以上に色んな経験だってしてる。それは、女としてもね」
「……」
女として――そんな言葉が、俺の頭の中をモヤモヤとさせた。
「見ず知らずの私をかくまってくれること、ホントに感謝してるんだ。オジサンの方が、難しく考える必要なんてないよ。だから、さ――」
そう言いかけた真の言葉を、俺はギロっとした厳しい眼差しでそれを制した。
「だから、抱けとでも? 言っておくが俺はそんな理由で、部屋に居ることを許したわけじゃねーよ。そこだけは間違えるな」
柄にもなくマジになって、真の目を見て言う。
しかし、それを受けた真は――
「うん、わかってるよ。だから、私も――昨日とは違うの」
そんな風に言うと、口元をくすっと綻ばせていた。