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　既にこちらが無害であることは、示せているはず。だとしたら真にしても、好き好んで俺なんかと深い仲になろうなんて望まないだろう。幾分自虐的ではあるが、そう考えれば少しは気が楽になった。

　しかし、そう思うも束の間。

　髪を拭きながらリビングに戻った俺は、テレビを観ている真の背中に向けて言う。

「おや？　まだ寝ないのかな」

　それが、やや白々しいセリフとなったのは無理もなく。

「眠くないんだもん。だって、まだ十時前だよ」

　真に教えられるまでもなく、俺自身がまだそんな時間だとは思っていない。

　それはなにも当面、早起きの必要がないから、というわけでもなく。俺は普段から、とかく早寝するという意識に欠けているタイプだった。

　普段の就寝時刻は、概ね深夜の二時過ぎ。きっと次の日を迎えることが、潜在的に嫌なのだろう。劇的に変わることのない日々の流れに、無駄と知りつつも抗っていたのかもしれない。ある意味では、とても子供じみている。

　周囲の人々がなんの疑問もなく生活しているように見えて、そこはかとなく違和感を覚えていた。

　まあ、そんな風に考えてしまう原因は、やはり四十にもなって一人でいるからに他なるまい。先のことを鑑みれば、なにかを変えなければと心の片隅では常に思っていたのだ。

　その様な中年の戯言に、誰も聞く耳は持つまい。だから、それはいい。

　今、俺の暮らしにも、劇的な変化というやつが訪れていた。それを俺が望んだつもりは、ないのだけれど……。

「この後――どうする？」

　意味深な言葉を囀（さえず）り、真は俺に微笑を向けた。