ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
流石に若いだけあって、不平を口にする瞬発力もすこぶる素早いな。などと、そんなことに感心する自分に些か呆れる。
ともかくどう言われようとも、この日の予定は変更はない。俺は当然一日も早く、無職というレッテルを剥がす必要があった。
それに――
「部屋で一人なんて退屈だよ。私も一緒に行ったって、いいでしょう?」
「そういうわけには、いかねーよ」
外出時に真を同伴するリスクについては、既に昨日思い知らされている。だから、そんな風に粘られても甘い顔をするわけにはいかなかった。
「ねえ、お願い。オジサンの邪魔したり、しないからさぁ」
「駄目だって言ってんだろ!」
猫なで声をややキツめにぴしゃりと跳ねつけると、真はようやくわかって――否、諦めてくれたらしい。
「昼飯の用意はしてあるから、腹が減ったら勝手に食ってくれ。夕方までには戻る。それまでは、部屋で大人しくしているんだ」
駄々っ子を諭すような言葉には、最早反応はなかった。
「……」
真はプイッと顔を背けると、体育座りの姿勢でまたテレビを観ている。丸めた背中に、拗ねたその気持ちを滲ませるようであった。
俺は一応の身支度をし、部屋を出る前に再び声をかける。
「じゃあ、出かけてくるからな」
「……」
だが、じっと丸まった背中は、一向に返事をくれなかった。