ほんとのうた(仮題)
第4章 重ね合うもの
怪訝な想いに顔色を染める俺に構わず、真は更にこんな風に宣う。
「やっぱり、そんなもんだよねー。そんな年頃てゆーか。それでもさぁ、ちょっと後ろめたい気分はあったんだよ。だけどオジサンの話を聞いたら、なんか吹っ切れちゃったな」
「い、いや……待て」
「そうだよ。柵(しがらみ)から飛び出してみないと、わからないことだって絶対にある!」
「……」
握り拳で力強く語る真の横顔を眺め、俺は思わず顔を覆った。
俺はなにも、真の失踪を正当化してやるために、自分の身の上話をしたつもりはない。いや、しかし……内容的にはそう受け取られても仕方ないのかも。畜生、迂闊だった……。
「ちょっと、聞け」
「ん、なぁに?」
「俺とお前では、なんて言うか……少なくとも、同じにはならねーだろ」
これ以上、真のやつの思慮が逸脱する前に、俺は何とか軌道修正を試みるのだが……。
「なんで?」
「俺はただ単に、ドロップアウトしただけで。お前の場合は、その……どうなんだよ?」
結局は言葉に詰まり、俺は理屈をなし崩しにすると取り留めもなく訊ねていた。
「うーん……私の場合は、ね」
話すのが気が進まないということは、その語り初めですぐに感じた。感情を揺るがすような姿は見えないが、逆にわざと無関心を装っているようにも思う。
それでも真は、ぽつりぽつりとした言葉を連ねると俺に聞かせた。それは俺が予想してたよりも、随分と複雑な話であった。