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ほんとのうた(仮題)

第5章 騒々しい景色の中で


 その中には当然、俺の住むS市の情報も含まれている。が、他にも九州から北海道、果てはハワイなどの異国の地までにそれらは広がりを見せようとしていた。

 もちろん、その内99.9%はガセであるが、そうしたものが多数あることにより逆に正しい情報を埋没させるという効果を生む。

 当初、取材で訪れていたワイドショーのレポータ連中も、流石にS市に決め打ちはできなくなったのだろう。最近では、その姿を見せなくなったようだ。

 更にはそういった情報が多いことにより、天野ふらのは単にどこかに雲隠れしているだけ、といった雰囲気がファンたちの間で蔓延するようになっている。

 ニュースが流れた頃はネガティブに流れがちだった彼らの心理は、そんな意味ではかなり楽観的なものに変わっているように思われた。

 まあ、その点で一番救われているのは、ファンに心配をかけたと自覚する真自身であろう。

 目的のショッピングモールに到着したのは、既に夕方近くであったが、観光地にある人気施設の広大な駐車場はまだ多くの車で埋め尽くされていた。

 人目を避けたい身の上としては、その場所を選ぶのは一見、無謀の様にも思う。だが、高が買い物でわざわざここに来たことには、それなりの考えがあった。

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