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触って、七瀬。ー青い冬ー

第21章 湖上の雫



めくられると現れるのは
笑わない七瀬の、幾つもの表情

カメラを避けるように目を逸らした
かと思ったら今度はストレートにこちらを見据える

手や腕がシャツから覗き、俺の視線を操る

腰や腹に無垢な白い指が立っている


これ以上見たらきっと、収まらなくなる欲情

だけど目が離れない

何故、そんなに煽ってくる…
これじゃあ誰がいつ夜のお供にするか…

やめろ、今すぐ…!


「はいはい、もう十分わかったわ」

三刀屋が雑誌をぱたんと閉じた

「…何が…」

供給過多の酸素に、脳がパニックを起こしたらしい
まともに物が考えられん

「要するに、お前はまだ七瀬きゅんが大好き大好き大好きーってことがだよ!今のお前の表情ヤバかったからなあ…あとちょっとで勢い余って俺のこと襲ってたかもしれないぞ」

「それはない」

「まあとにかく!そんなに意地張ってないで潔く振られてきたらどうなんだあっ!?これ以上嫌われようとするのも無理ってほど嫌われてきたんだし!いっそのことしっかり振られた上できっちり縁切れよ!そうじゃなかったらお前よりも七瀬夕紀の方が危なさそうだわ!っつーか!つーか!何でお前ら二人そんっなに周りくどい付き合い方しかできねえんだよッ!!好きなら好き、嫌いなら嫌い、はっきり言えよばかああああッ!ばかあああッ!もういっそのこと俺がお前らのキスしてる写真全国にばらまいってやっかあああっ!?ああっ!?」

三刀屋が叫び、再び声にエコーがかかった

「おい誰だーさっきからそこで騒いでる奴ー早く降りてきなさーい」

「あっ、すみません先生」

あはは、と三刀屋が階段の下に向けて謝る
そして息を吐き、高梨に向き直った

「…まあ…落ち着けよ高梨…」

高梨は力なく笑った

「お前がな」

「何だよ、反論はねえのかあ反論は?」

「…俺だってこんなにうだうだしたくなかったよ
そりゃあ、いや、一回はきちんと俺の気持ちは伝えたはずだった。一度はな。でもそれがぶっ壊された。今回は立花だった。でもそれに限らず香田千尋、葉山秋人、翔太、桃屋なんとか、とか…
七瀬に近づこうとすると邪魔が入るんだよ!
俺のせいか、俺のせいなのか?
桃屋なんてまだどこの誰かもわかんねえよ
その上に今度は紘だって?いやまだこいつは…
とにかく、こんだけ敵がいて俺はいつまで戦ってりゃいいんだよ、教えろよ」

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