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触って、七瀬。ー青い冬ー

第23章 舞姫の玉章



「嘘じゃない。俺とお前、立花に恨みがあるのに
大人しく従ってた。
もう俺達もガキじゃない。授業受けてりゃ良い時代は終わったんだ。これからは変えるんだ
自分の足ぐらい自分で動かさないと
人に手綱引かれて、引き摺られるだけの犬になる。
俺はそんな生き方はしない。お前にもさせない。
お前のためだと思ってやったことも、
今になってみればただの自己満足だったんだ
今度は立花を潰してやる」

高梨は自信家だ
何の疑いも、根拠もなく自分の道を進んでいく

僕には無理だ

「自分の生き方は自分で決めるから。
余計なことしないで、構わないでいいから。
俺はサキちゃんと約束したんだ。
立花の言いなりになろうとして婚約したんじゃない。この約束を破ることはできない」

サキちゃんを見捨てるなんてできない

「それはお前の好きにすればいい。もしお前が本当にあの子と一生付き合って生きるつもりなら」

「…それは」

【何も変わらなくていい。今と何も変わらないよ。夕紀君が他の誰を好きでもいいの。】

それは、彼女の願いだ
僕だけがそれを叶えられるらしかった
彼女が僕にそれを望むなら、応えたい

「結婚するってことは、相手が死ぬまで側に居続ける覚悟があるってことだな?」

高梨は僕の目を見透かして心の中も読むようだ


「そんなに弱い気持ちでするもんじゃないだろ」

「サキちゃんはそれでも良いって言ったんだ。
俺が誰を好きでも良いって、だけど名字だけを貸してほしいって」


「じゃあ本当に結婚したいのは誰?」


結婚なんて、一生したくない
誰かと一生一緒に、なんて考えるだけで
吐き気がする

恋愛は信じられない
いつ冷めるかわからない熱に身を任せられない

愛も信じられない
自分への愛も足りないままで、誰も愛せない
愛されても受け入れる余裕もない

僕は、きっと人のように幸せを受け入れられない


「そんなこと、聞かれたってわかんないに決まってる。大体、ちゃんとした恋人すらいたこともないのに考えられない。高梨だってそうだろ」

僕は高梨に聞いたが、返事は聞きたくなかった。
考えたことがあるにしろないにしろ
虚しくなるのはわかっていたから

「考えたことはない。でもできたら子供が欲しい」

「…意外だね」

















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