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本気になんかならない

第19章 中秋

近づく俺に気づいた北里は
ゆらりと立ちあがって

何かをつぶやいたあと、
そのままぶつかってくる。。

「あっぶないな。大丈夫?」

不意をつかれた俺は
とっさに北里の両肩をつかんだ。

その細い肩は
俺がちょっと力を入れると折れそうで
小刻みに震える。

フワッと花のような香りが鼻腔をかすめ

それは過去の情交を思いおこさせた。

"愛してる、北里…"

俺がいつか言ったセリフが脳裏によみがえる。

心がざわめき、鋭く甘い針が
俺の中心を貫いた気がした。



だけど、もう過ぎたこと

俺はかぶりを振って現実を睨んだ。

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