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本気になんかならない

第19章 中秋

未だ震える北里の頭を撫でて
俺はひとり、客席とマスターに礼をした。

ふたたびの拍手をもらったあと、
「席に戻ろう」と促す。


カタン…

椅子を引くと北里は座る。

その様子が頼りなげで
ずっと傍にいたかったけれど

さっき重ねた唇から
俺の中心へと広がった疼きを

引きはがすかのように俺は
カバンに手を突っ込んで
そして、北里の前に置いた。

「ずっと返せないでごめん。
これまで、ありがとう」

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