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本気になんかならない

第20章 リンドウの咲く季節

俺が思いかえしていると、小浜さんのてのひらが伸びてきた。

「それ、直してあげる。貸して?」

「え?いや、家で直すよ」

はだけて見苦しい胸を隠そうと、俺はボタンホールに無理やり布を引きいれてみた。
けど、そんなのはちょっと動くとすぐにはずれて

「いいから、ね?」

もう一度差しだされた手に、お願いしようかと気持ちが傾き

「じゃあ、頼みます」
って、バッとシャツを脱ごうとしたけど。

「きゃ」
なんて反応されて、俺は再度シャツを着こむ。

「…ごめん。やっぱ、いい」

ボタンだけじゃなく、生地自体が破れてもいるし。
多少みすぼらしいけど、本日夕方までのこと、なんとか過ごせるだろう。

みたび、小浜さんは申しだしてはくれたけど、俺はできるだけ丁重にお断りした。

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