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本気になんかならない

第21章 古りゆくもの

考えると、すぐに浮かぶ。
あれは、高3になりたての春、
猫演劇(複雑な名前の猫が多数集まるミュージカル)を見にいったときだったな。

「ミュージカルって抵抗ある人いるけど、
和波君は違ってよかった。
いきなり歌いだすからハテナな人いるでしょ?」

「うん。俺、そういうのあんまり考えないから」

そう言うと、クスクスと笑った。

「私、あの挿入歌、、『メモリー』ってね。
”思い出のその先”って意味だと思う。

過去にとらわれた思い出だけじゃ終わらない。
くくりは”a new day has begun”だもの」

「あー、現在完了形:have + 過去分詞。
まさに今、新しい一日が始まってるね」

「でしょ?
絶望を希望に変える力を見いだして…
登場者、それぞれが持っている幸せに気づくの。

当たり前の現実は、実は奇跡なんだって。
明日を生きる力をつかんで、孤独から解き放たれて輝く。
そのためのメモリー」

俺はただ頭のなかに心地いい音楽としか
聴いていなかったのに、
メグはよくこんなにセリフに変換できるよなぁって心底脱帽だった。

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