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本気になんかならない

第24章 唯一無二

ゴンドラに乗りこんで、対面に座った小浜さんは一呼吸後に話しだす。
ゆっくりゆっくりと俺たちはあがっていく。

「卒業文集、ひとことだけだったね。
潔くて、カッコ良かったよ」

いや、あれは、、
”ありがとう”以外の俺の気持ちは混沌として

そのほかに出てくるのは、
ネガティブの行列だったから
そんな言葉を残したくなくて書けなかっただけなんだ。

そう思ったけど、
「ありがとう」と俺は返した。

その後は沈黙のうちに、ずいぶんと高度があがった。
見おろしても、あれが弓道部員の頭頂だなんてわかるわけないのに。
仲がいいとはいえない女子とのふたりきりに困った俺は、そのまましばらくを窓外の遠景に目を向ける。

そんな俺を小さく呼んで、小浜さんは明かす。

「宮石君。ホントはね、誰も来ないの」と。

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