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本気になんかならない

第29章 オーバーラップ

その教師と俺のあいだに緊張があるのを
白峯はどこまで把握してるのだろう。
彼は悠然と話す。

「…実は私はね、おわかりでしょうけど、いい生徒の部類ではありませんでした。

毎日の乱闘は当たり前。
制服着てるくせに授業は出ずに、繁華街の片隅でラリってましたね。
そんな手のかかる私なんてほっときゃいいのに、先生は見捨てずに良くしてくれたなぁって、あとになってありがたみが沁みてます。

私が学校を卒業して一見でもまともな人間になれたのは、その先生がいてくれたおかげでしょうね。
だから、先生にもできるだけ生徒の味方でいてほしいなって思います。
いや、味方でいてくださっているのは聞いてるんですよ。
娘から、、いつも優しい言葉で気遣ってくれる先生だって。

そこでね、先生。先生の仰るとおり
就職したら、職場では極力涙を見せないほうが有利かもしれません。それは、私も思います。
なので、その練習に。
自宅はもちろんですが、沈んだときの逃げ場を学校にも作っていただけないでしょうか?

どうしようもないときは、そこで泣く。
おさまれば、授業に出る。
成績がさがっても学校を責めたりなんかしません。
まずは、通えることが目標です。

泣いていれば、なぐさめたくなりますよね。
でも、その気持ちで充分です。
特別な声かけもなくていいんです。

元気じゃないけど今日も来てるな。
危ないことはしていないな…ってそれだけをみていただければ。

自ら進んで人を傷つけようとする娘ではありません、どうか見守ってやってくださいませんか…?」

「よろしくお願いします」
と白峯とともに頭をさげ、その部屋をあとにした。

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