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本気になんかならない

第29章 オーバーラップ

帆澄、まだ帰ってないな。
と玄関の靴を確認していたら
いきなりドアが開き、そのままダダダ…………バタンと消えた。

俺はキッチンから水のボトルを取って、彼の部屋をくぐる。

「俺、間違ってない。
あいつら全員トドメさしときゃよかった。
見てた教師も全員だ」

帆澄の腕には切り傷があり、
そこかしこが腫れあがっていた。

「服は?」

「そこ」

見るとゴミ箱にくちゃっと入っていた。
土と血がつき、破れた帆澄の新しい学生服。

「今度、囲まれたら俺も呼べ。加勢する」

「怖がってもう、寄ってこないだろうけどね。
そのときはヨロシク」

泣きそうな帆澄が笑って
俺はヤツの肩に手を当てた。

俺の弟、素行良好とは言えないけれど
お茶目で可愛い、デカイ弟。

無茶はするけど、こいつも基本優しい。
俺も幾度か救われた。
だから、こいつが悲しんでるときは俺が守るんだ。

「奥の手は、千年殺しだったっけ?」

俺が言うと、また笑った。

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