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本気になんかならない

第29章 オーバーラップ

帆澄は仕掛けられたことに傷ついてるんじゃない。
観衆の他人事になったことに傷ついてるんだ。
誰も手を差しのべてくれないことに。

「どうして弟の味方が誰もいなかったんですか?」

「物事は、多角的に見ていかなければ。
こちらにも言い分があるんです」

それは、中立じゃないってことか?

「なぜ?
弟を傷つけられたのに、加害者に同情しろと?」

「加害者?こちらは被害者ですよ。
まずは弟さんに落ち度があったからこうなったわけでしょう?」

「どんな落ち度があったんですか?」

「枕ホストみたいなことをしてたって聞いてますよ?
ああ、お兄さんの真似でしょうかね?
その顔だと女に困らないでしょ?
うらやましい限りですねぇ」

その瞬間、校長が叫んだ。
いや、俺じゃない。
北里が急須のお茶をぶっかけたんだ。

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