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本気になんかならない

第30章 初デート

「そうね。私も、こんな痛い思いするの二度と嫌だけど和君みたいな可愛い赤ちゃんなら、また生んでみたい」

「何だよそれ」

そう言って笑う北里は、俺を落としてあげる。

「和君、ありがとう、本当に心強かったよ。
予定外に遅くまでごめんね」

「いや、驚いたけど
北里をひとりになんてできないし。
ただ俺は、たいして役にはたてなかった。
CDも、聴く余裕なんてなかっただろ?」

「ううん、たまに耳に入ってたよ。
和君の声も…。
あのCD、出産祝いにちょうだいね」

「CD以外にも何か考えるよ」

北里の妊娠を聞いたときには
祝いを贈るなんて、微塵も考えてなかったけど

「や、催促じゃないのよ?」

実際に北里に会って
赤ちゃんが生まれて

そんなまぶしい奇跡に遭遇した俺は
これ以上ないくらいの確かな幸せが沁みこんできていて

北里と赤ちゃんに

感謝を伝えたい気持ちでいっぱいなんだから。

「わかってるよ。疲れたろ?もう休めよ。
俺、今日はクルマで寝る。
必要なら呼びだしてくれたらいいから。
じゃ、おやすみ」

「え?行かないで…?」

あんまり長居しても体力を使わせるだけと、
明かりを消して部屋を出ようとした俺を
彼女は呼びとめた。

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