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本気になんかならない

第30章 初デート

振りむいた俺は、薄暗がりに目を凝らす。
窓からの光がぼうっと明るくて、
何となくわかった輪郭を見つめた。

「眠れないの?まだどこか痛い?」

「違うの。ごめんなさい。。」

「電気、つける?」

「このままでいい…」

それきり黙ってしまった北里に、俺もしばし沈黙。


足を戻し、手に触れた椅子を移動させて座り、
そして、頭に浮かんだことを喋りだす。

「なぁ、赤ちゃんの名前、決まってるの?」

「候補はね。だけどまだ…」

そう言って北里は口をつぐんだ。

そうだよな、家族と相談して決めるんだよな。

偶然にも誕生の瞬間に居あわせた赤ちゃん。
できれば俺の記憶のなかへ、名前とともに残したかったけど。

俺が立ちいれる部分じゃないなと、
腕を組んで椅子の背にギシッともたれた。


そして俺は
この場にいるはずの、まだ見ぬ人物を気にかけた。

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