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本気になんかならない

第30章 初デート

「…なぁ。ご主人さんはいつ来るんだ?」

「しらせてない、、」

「え?あ…そっか」

病院の人たちは俺を夫だと思ってるわけだし
北里は連絡どころじゃなかったし

「なら、今からでも来てもらわなきゃ?」

荷物のないあの部屋に帰れば
何があったかくらいわかるだろうと思うのだけど
気づいてない?
いや、こんな時間に妊娠中の妻が家にいないんだから、わからないわけないよな。

てことは、まだ帰宅してない?
まさか、忘年会とかでもないだろう?

と思った俺に、彼女は教えてくれる。

「忙しい人だから…」


北里の声はどこか寂しげで

ご主人、留守がちなんだろうなって思った。


「だったらなおさら心配してるんじゃない?
連絡したほうがいいよ」

「…ん。朝にメールしとく。
入院手続きとかも心配しなくていいから」

「うん…」


ほかに、あえてこの場で話すようなことを思いつかない俺は、目も口も閉じてすごす。

部屋にある時計の秒針が、
コチコチと刻むのがやけに耳に響いて

だけど俺は、自覚のないまま眠ってたんだと思う。

ぼんやりしたなかで
北里が俺を呼ぶ声がしたような気がして
顔をあげた。

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