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本気になんかならない

第32章 クリスマス会

「先生、お手々がサンタさんとおんなじねぇ。
私、プレゼントくれたときに、ぎゅう(握手)したのよ」

手?そんなとこに特徴が?

「僕の手、サンタさんとどこが同じなの?」って尋ねると

「うん!指先がね、ちょこっと硬いでしょ?爪も短いし」と返ってきた。

爪はたいていが短いんじゃないだろうか。
つぎにサンタになるときは、手袋必須だな…。
と、考えながら説明する。

「バイオリンを弾くとね、硬くなる人もいるんだ。
同じだったってことは、サンタさんもバイオリンを弾くのかもね」

「そっかー。私は、ピアノを習ってるの!
今ね、きらきら星を練習してるの!」

「僕は、体操教室に通ってるよ!
トランポリンで1メートルくらい跳べるんだ!」

「私はね、私はね、ピアノとプール!
でも冬休みは、スケートにも行くの!」

子どもたちの関心がサンタからそれたのはいいものの、同時多発な「聞いて、聞いて」をいっせいに浴びるのは、まだまだ慣れていない俺。
全員に受け答えしたいけれど、残念ながらそんなスキルは持ちあわせていないという自信がある。

「みんな、すごいなぁ。
また、ゆっくり聞かせてね」

身をかがめて、そんなやりとりをしながらも
北里の方向に目をやると

サナちゃんと一緒に泣いているコの父親だろう男性と
何やら親しげに話をかわしていた。

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