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本気になんかならない

第32章 クリスマス会

まもなく、あの4人が、園門前で他の子たちを見送っていた俺たちに近づく。
と、そのなかの北里が声をかけてきた。

「宮石君。ここで働いていたの?
全然気づかなかった」

今度は、苗字で呼ばれた俺。
俺はここのスタッフで、彼女は利用者だとわかってはいても、いっきに心がトーンダウン。

「うん…はい。
いつもはむこうの施設なんです」

視線を落とすと、彼女の細長い指が
左肩にかかる黒いカバンの持ち手に添っているのが目に入る。

「そう。まあ、元気そうでよかった」

ため息が出そうな気分ながらも俺は、この場が早く終わるように、お決まりのセリフを返した。

「はい。北里さんも…」

呼びすてだった名前に敬称をつけただけなのに、なんだかとってもよそよそしく感じた。

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