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本気になんかならない

第32章 クリスマス会

そんな俺よりも先に部屋に戻っていたエンボス係の職員2名が、作業に取りかかりながらお喋りをはじめていた。

「…君のお父さん、やっぱり気があるってー」

「なんったって、サナちゃんのお母さん、キレイだもん」

サナちゃんの母親って、北里のこと?

宛名書きを続けようと席に向かった俺は、その途中で足を止める。
ふたりは、あの男のコとサナちゃんの仲良しエピソードを話したあと、こう言った。

「子持ちシングル同士、話もあうでしょうしね」

ふたりが何気なく話す内容。誰も聞きかえさないということは、ここで働く人たちにとっては周知の事実なんだろう。
だけど俺は、雷に打たれたような衝撃が頭から全身へとビリビリと駆けめぐったんだ。

子持ちシングル?
北里が?

名簿を見たときに、そんな気がしたけれど
まさか、ないよな、って思ったんだ。

これまでに、何があったかはわからないけれど
まさか、北里が悲しい思いをしていたなんて
その予感が当たるなんて、

そんなことないって、彼女はずっと幸せだって
そんな現実を、俺は描いていたんだ。。

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