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本気になんかならない

第36章 夜は恋蛍

どうにもならない現実を突きつけられて、苦笑いが定着しそうになったときに、マスターの長い手がグラスを置いた。

私の耳元で伝える。

「どうぞ。和波君から」

「え?」

客席を見まわしても彼の姿はなくて。
仮面をつけていたって、見落とすわけない。

「まだこのあたりにいるはずだよ。
ケーキ用意してるから、連れもどしてきな?」

私が気づかないうちに店先で、マスターに頼んだの?

そして、帰ったの?
今日は、私の誕生日なのに。

いくらシャイにしても、そんなことってある?

もしかして…もしかして、別れるために呼びだした?

そっ、そうかもっ。
だって彼は、私の誕生日がいつかなんて聞いたことないし、私も教えたおぼえ

ないっ。

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