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本気になんかならない

第36章 夜は恋蛍

急いでバーを出て、彼にコールする。
あたりを見まわしながら通りを行くと、同じく耳に携帯を当てている彼がいた。

彼は私と目をあわせたくなさそうで、顔をそむけて「本屋に」とか言って。

やっぱりサヨナラを決めているのかと…私の目は、こらえきれずに涙を落とした。

と、慌てて優しくしてくれる彼。

「泣かなくたっていいだろ?」と、指で涙をぬぐう。

"別れたくない"とすがろうとした私は彼の顔を見て、その言葉を飲みこんだ。
彼の両頬は、もう笑うしかないほど腫れあがっていたから。

「……どうしたの?そのほっぺ」

取りつくろう彼が、さらにおかしくて。

お別れじゃなかったことへの安心もあって、嬉しくて幸せで。
誕生日も祝ってもらえて。

そのあとのベッドでは、何度も彼に繰りかえした。

「大好き」って。

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