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本気になんかならない

第43章 扉

セリフを考えてるのか彼女は、複雑に視線をさまよわせる。

今、彼女の頭のなかにあるのは何だろう?

社会的な評価とか責任とかいう、難しいことばかりなんじゃないだろうか?

たくさんの人がいるなかで、俺に出会ったことは、彼女にとって幸せではないのだろうか?

テーブルの上で握りしめられた、彼女の手をじっと見つめた。
甲が少し荒れた華奢な彼女の手。

俺の手で包みたい。

そうだ。弱気になるな俺。
自分が信じた彼女を、守りたいだろ?
俺ばかりが守られるなんて、そんなの情けないじゃないか。

ひとりで抱えてきた彼女を、またひとりにはさせない。

決意を二重三重に、俺は彼女に伝えた。

「北里…好きだよ。だから、俺には甘えていいんだよ」

いつからこらえていたのか、彼女の瞳からハラリと溢れた。

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