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本気になんかならない

第43章 扉

涙に詰まりながらも、彼女はまだ続けようとする。

「ねぇ、それって、背負いこまなくてもいい苦労なのよ?」

「苦労なんて、生きてりゃするもんだ。
それに、北里との苦労なら、望むところだよ」

まさに今、俺は北里に苦労をいただいてる。
だけどこうやって抱えている胸のうちを精一杯に明かしてもらえるのは、嬉しい気がした。

お互いの衝突を避けていたこれまでは、だからこそうまくいかなかった。
本当の気持ちを隠して、自分で勝手に傷ついてばかりいた。
それが相手をも傷つける行為だとは、考えずに。

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