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本気になんかならない

第43章 扉

「俺は北里を好きだよ。
北里だって俺を好きだろ?」

泣き顔を見られたくないのか、彼女は厨房側に顔を向けて立ちあがる。

「お料理、まだかしら?私、見てくる」

北里が動揺してるの見え見えで、なんか可愛くさえ思えた。

歩きだす彼女をつかまえて、ひとけのない…2階につながる廊下に引っぱる。

「はぐらかさずに、考えてよ。俺のこと。
俺は、北里が心配して駆けつけてくれたことが、俺に対する気持ちの証拠だと思ってる。

俺は完璧な女なんか求めてないよ?
ひとりで北里が気にしても、もう俺は離してあげないから」

「だってだって、私は…恵の姉…」

「それ言っても前に進めない。
メグも気にしてないって言ってくれてる。
北里は、俺の過去を許してはくれないの?」

「………」

ハンカチを強く握った彼女は、声なく震える。
沈黙が始まりそうなその時、2階から音がした。
ドアを開けて、階段を踏みしめる音。

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