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好きだって気づいたとき

第10章 中学最後の夏休み

俺は遼太の背中に両手を回しギュッと抱きついた。


「遼太・・・遼太・・・」


遼太も俺をギュッと抱きしめた。


「きっとみんなわかってくれるよ。
だって、知哉は吉田を助けようとしただけなんだから」

「でも・・・でも・・・」

「大丈夫、大丈夫だから」

「うん・・・」


俺の頬に遼太の頬が重なった。
そして遼太は耳元で優しく囁いた。


「知哉、俺はお前の味方だよ。
いつもお前のそばに居るから。
お前から離れたりしないから大丈夫だよ」


俺は背中に電気が走ったような感覚がした。
それまで力強く抱きついていた俺の体からスっと力が抜けていった。
こうしていることに安心感をおぼえた。


「知哉・・・だよ」

「えっ、なに?」


何を言ったか聞き取れなかった。
さっきまで頬と頬が重なっていたのが頬ではなく、別の生暖かいものが触れている。
特に気にすることも無く、そのまま抱きしめられていた。


「知哉・・・」


もう一度名前を呼ばれ、うっすらと目を開けると頬に感じた生暖かさが、唇に感じた。


「あれっ、この感覚って・・・」


俺はそのまま抵抗することも無く、受け入れた。
俺はそのまま眠ってしまった。
目が覚めると遼太はもういなかった。


「遼太、帰っちゃったんだ・・・」


何だか物凄く寂しく思えた。

翌日、夏休み開始。
昨日遼太が励ましてくれたものの、気が晴れることはなく、宿題も手に付かずただ朝からずっと、ボーッとしていた。


「あっ、電話鳴ってる・・・でもまぁいいや」


トイレ以外部屋から出たくない。
しばらくすると電話は切れた。
そしてまたすぐに鳴り出した。


「ったく、しつこいな」


その後も、何度も何度も続けてかかってきたけど、俺は無視し続けた。





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