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take a breather

第24章 むかえに行くよ

「おっ、そうだ。智、お前に頼みたいことがあるんだ」

家族団欒の晩飯時
父ちゃんが突然、俺に頼み事があると言い出した

「頼み事って、俺に?」

父ちゃんから頼み事なんて、生まれて初めてじゃないか?

「あぁ、智じゃないと駄目なんだ」

「ふ〜ん…なに?」

「父さんの会社の新社長一家が、アメリカから帰国されてな
社長のご子息が智と同じ高校に通うんだ
それで、そのご子息と友達になってやって欲しい」

「はっ⁈俺と同じ高校なら、そこそこの年齢だろ?
親を通して『友達になって』なんて頼まれたのか?」

子供じゃないんだから、友達なんて自分で作ればいいだろうに…
社長の息子って事は、相当な箱入りボンボン?
自分で友達さえ作れないのか?

俺、そんな奴の友達になんなきゃいけないの?

「社長からそう頼まれた訳じゃないさ
新社長は前社長の息子なんだが
一から仕事を学ぶ為に、父さんたち同期と同じように平社員から仕事を覚えた
だから、若い時はよく飲みに行ったりしてたし
お互い家族を持ってからは、家族ぐるみで会ったりもしてたんだぞ?
智は覚えてないか?」

「いつ頃の話だよ」

「社長がアメリカの支店に仕事を学びに行ったのは、確かお前が小学校に入った年だったかな…」

「それじゃあ覚えてねぇよ…
そんなにマメに会ってた訳でもないんだろ?」

「ん〜、年に1、2度くらい?」

「じゃあ無理だわ」

幼稚園児に年に1、2度しか会わない他人を覚えていろというのは、無理な話だろう

「んー、そうかぁ
でも、社長はよく覚えてて
それで智の名前が出たんだ
昔は息子さんとお前、ふたりで仲良く遊んでたから」

そりゃ、大人の記憶力なら覚えてるだろうさ

「とりあえずわかった
息子さん本人と会って、あちらさんが望むなら友達になるよ」

もしかすると、本人は知らずに親だけで勝手に話が進んでるだけかも知れないしな

「おう。頼んだぞ?」

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