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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

中学3年の夏
高校見学に行った俺は、その校舎内の廊下に飾られていた絵に、目を奪われた

黒い細いペンで様々な物が描かれている絵…
何が描いてあるのか、隅から隅まで観たいけど、見学中の俺にはそんな時間は与えられていない

仕方なくその場を離れたけど
俺の頭の中から、あの絵が離れる事はなかった

なんでそんなに気になるのかは、わからない

騙し絵ではないけど、あの絵の中に何が描かれているのか、探したいだけなのかも…
元々、間違い探しとかは好きだしな

いつまで経っても頭の中にチラつく絵…

そして決めたんだ…あの絵をもう一度観るために、あの高校に入ろうって

担任からは、もうワンランク上の高校を目指せば?って言われた
でも大学受験は、自分の頑張り次第でいくらでも上を目指せるから、と担任を納得させた

あの絵の傍で高校生活を送りたいからとは、流石に言えないよな

そんな一時的な感情で、高校を選ぶもんじゃないって、きっと反対される

俺だって正直驚いてるよ
まさか一枚の絵ごときで進路を決めるなんて、俺らしくない

それでも、惹かれてやまないあの絵の為に、俺は進学先を決めた

そして、春…

新入生代表の挨拶まで獲得し、無事に入学式を終えた俺は
放課後、すぐにあの絵の元を訪れた

「やっと会えた…」

初めて観た日から、約8ヶ月ぶりの再会

思ってた以上に胸が熱くなった

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