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take a breather

第27章 Turning Up

「さ、俺の話はもうお終い
今度は智さんの話聞かせてください」

「僕の話?」

翔くんがニコッと笑って頷く

「はい。どんなお仕事されてるんです?
智さん、サラリーマンじゃないでしょ?」

「え?わかるの?」

まだ僕の話なんて、失恋した事くらいしかしてないよね?

「なんとなくそう思ったんですけど
合ってました?」

「うん、合ってる
僕はね、お習字の先生やってるんだ」

「お習字の先生?
子供たちに教えてるんですか?」

「子供たちだけじゃなく、大人の人にも教えてるよ?」

「そうなんですね
俺、子供の頃、一瞬だけ習字を習った事あるんですけど
教室には子供しかいなかったイメージが…」

「昔はそうかもね
でも今は、カルチャースクールとかもあって、そこで大人の人たちに教えてる」

「成る程。今の大人は、趣味を楽しまれる方が増えてますもんね」

「そうなんだよ
僕よりも年上の方が沢山習いに来てくれてる」

「へぇ〜、俺も習いたいなぁ」

社交辞令?
でも翔くんは本当に思った事しか言わない気がする

なら、誘ってみようかな…

「習いに来てみる?
お試し体験もやってるし」

「カルチャースクールにですか?」

「ううん。僕の教室の方
自宅でやってるから、興味があるならいつでも来ていいよ?」

「本当ですか?
じゃあ、行かせて貰おうかな…
俺、字がめちゃくちゃ汚いんで上手くなりたいんですよね」

字が綺麗に書きたいなら、ペン習字の方がお勧めだけど
習字でも教えてあげられる事はある

「それなら決まりね?
連絡先教えるから、翔くんの都合がいい日に連絡して?」

グラスが乗っていた紙製のコースターに、電話番号を書いて翔くんの前に置いた

「ありがとうございます」

笑顔で受け取ってくれた翔くん…よかった

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