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take a breather

第29章 TRAP

「お先…」

「翔ちゃん?顔真っ赤だけど大丈夫?のぼせた?」

智くんがソファーから立ち上がり、こちらに歩いてくる

考え事をしていたせいで、随分と長湯をしてしまったみたいだ

「ごめんね、遅くなっちゃって…」

目の前に立つ智くんに謝った

「そんなこと気にしなくていい…
首元まで真っ赤だよ?
本当に大丈夫?」

智くんが俺を見上げ、不意に首に触れた

「脈も早い…
すぐに水持ってくるから座ってて」

「う、ん…ありがと…」

脈が早くなったのは、智くんが俺の首に触れてから…
のぼせたのが原因じゃない

心配そうな眼差しで見つめられ、心臓がドキッとなった

元々俺は、あの優しい眼差しに弱いんだ…
あの目で見つめられると、体から力が抜ける

今日は特にだ…
ふにゃんって崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えた

「はい、お水」

「ありがとう」

一気にグラスの水を飲み切った

「はぁ…」

「おかわり持って来ようか?」

「ううん、もう十分だよ。ありがとね」

「そう?なら、俺もお風呂入って来るな?」

「うん、いってらっしゃい」

智くんがリビングから出て行った後、ソファーの上に上体を倒した

腕を顔に当て、思いっきり息を吸い込み
智くんの匂いを嗅いで気持ちを落ち着かせる

脈を早くした原因は智くんなのには、智くんの香りで落ち着くだから…

「…変なの…」

呟いた後、もう一度鼻に腕を付け、大きく息を吸った

「ふふっ…いい匂い…」

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