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take a breather

第30章 Still...

遠慮気味に智くんの背中に腕を回した

「んふっ…今夜は情熱的な夜を過ごそうな?」

耳元で聞こえる智くんの楽しそうな声

「ばか…」

と言いつつ、智くんを抱きしめる腕に力を込めた

暫く無言で抱き合ってると、智くんがポツリと呟く

「ごめんな…」

「え?何が?」

謝られた理由がわからず、少し体を離して智くんの顔を見る

「ん…色々と…
わかっていたつもりだったけど、わかってなかった…
相談され無いって、結構ショックなんだな」

「あぁ、まぁ、そうだね…
いきなり高校行かないとか、どれくらいの期間かわからない旅に出るって言われたら
それなりにショックは受けたよ?
俺って、智にとってどういう存在?って」

「ごめんな?
俺、超身勝手な奴だよな
自分はひとりで決めて来たのに
逆に翔にそれをやられてショックを受けるなんて」

苦笑いする智くん

「俺こそごめんね?
意地悪したかった訳じゃないんだよ?
ちょっと驚くかな、とは思ったけど」

智くんがゆっくりと首を横に振る

「いや…今回の事で、翔がどんな気持ちで俺の話聞いてたのかわかったから良かったよ…
ありがとな?俺のこと、好きでいてくれて…
本当なら、こんな我儘男、捨てられてもおかしくない」

「あのね?前にも言ったけど
そんな智が好きなんだからね?
智は何にも囚われてないから智なの
だからこれからも自由に生きてよ」

「いいのか?」

「うん、いい。
絶対、俺のところに帰ってくるんだもんね?」

「いや、帰らねぇよ?」

「えっ⁈」

智くんがニヤッと笑い
俺の後頭部に手を当てると、唇が触れそうなギリギリの距離まで引き寄せられる

「お前も動くんだろ?
これから先は俺と一緒に」

「うん…」

返事を返すと同時に唇を塞がれた
外だけどいいよね?情熱の国だから。


俺と智くんは同じレールに乗った
いや、元から乗っていた

ただ、進むスピードと停まる駅が違っていただけ…

もしかして、この先も、長時間停車したり、廻り道をするかもしれないけど、辿り着く終着駅は一緒だから

これからもずっと、同じ夢見続けようね。


〈end〉

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