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take a breather

第4章 途中下車

フワフワする頭で今起きていることを整理する

俺の自惚れじゃない、よね?
大野さんも俺のこと…

俺の手を引いて歩き出す大野さん

「一目惚れだったのかな…」

「一目惚れ?」

「そう…綺麗な奴だなって思ってからずっと目が離せなくなって…」

知らなかった…大野さんに見られてたなんて

「松兄に言い続けててやっとお許しが出たんだよ
今回のプロジェクト勝ち取った祝いだってな」

「お許しって?」

「松兄が櫻井を手離したくなかったってのは本当の話し
でもさ、俺があまりにも諦め悪かったから『仕方ねぇなぁ』って
『その代わり大事にしろよ』ってしつこいくらいに言われた」

照れ臭そうに話す大野さん

あり得ないと思っていたことが現実になった

もっとこの幸せに浸っていたいのに…

「大野さん…家ココです…」

「そっか…」

離れていく大野さんの手を見つめた

「櫻井…」

呼ばれて顔を上げる
離れていった大野さんの手が俺の頬に触れた

「唇…大丈夫そうだな」

「あ…は…」

『はい』と返事をする前に塞がれた唇…

チュッと音をたて大野さんの唇が離れてく

「思った通り…柔らかくて気持ちいい」

フニャっと笑う大野さん

「じゃあ、また明日な…今日は早く寝ろよ?」

「は、い…」

大野さんに促されフラフラと家に向かって歩いてく

部屋の前に立ち、振り返ると
大野さんが片手を上げ、駅に向かって歩き出した

その後ろ姿を見送りながら指先で自分の唇に触れた

「ちゃんとケアしよ…」

大野さんにまた『気持ちいい』って言って貰えるように

自然に笑みが溢れる

「大野さん、これからよろしくお願いします…」

大野さんの背中に向けて呟いた。



《end》

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