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take a breather

第10章 Lotus

「あつっ…」

得意先での打ち合わせが終わり
駐車場に駐めておいた営業車に乗り込むと、異様なまでの熱気に襲われ思わず声が出る

車のエンジンをかけ、窓を全開にした

長かった梅雨も開け ようやく夏本番
今年の夏も暑くなりそうだな…

そんな事を考えながらギアを入れようとシフトレバーに手を伸ばす
すると、仕事用のスマホがなった

スマホを取り出し画面を見ると、同じ課の先輩の相葉さんからの電話

なんだろ?こんな時間に…

「はい、櫻井です」

『翔ちゃ〜ん』

相葉さんのこの甘えた声…
嫌な予感がする

普段はとてもいい先輩なんだけど
たまに面倒くさいことを頼まれるんだ

合コンの人数合わせに呼ばれたりとか…

「どうかしたんですか?」

『翔ちゃん この後の予定ってどうなってる?』

「今日はもう会社に戻って仕事するだけですけど…」

『ほんとっ⁈よかったぁ〜』

何がいいんだ?俺は会社に戻ると言っただけだぞ?
俺のこの後の時間が空いてる事を喜ぶなんて益々嫌な予感…

『あのね、俺 本当はこの後 新規のお客さんと会う約束になってるの
でも ちょっとトラブルがあって行けそうにないんだ
だから翔ちゃん 代わりに行ってくれない?』

新規のお客さん?
随分まともなお願い事だな
あの声の様子だと良からぬ頼み事かと思ったのに

なんか拍子抜け…

「いいですよ。相葉さんの代理だって言えばいいんですね?」

『ううん。そのお客さん 翔ちゃんが担当してくれないかな?』

「え?いいんですか?俺が担当になっちゃって」

新しい顧客探すの簡単じゃないのに…

『うん、全然オッケー。俺の友人なんだけど
今度 パン屋さん始めるの…
で、名入れの袋を作りたいって言うから話し聞いてあげて?』

「相葉さんの友人なら相葉さんが担当した方がいいんじゃ…」

『いやいや、翔ちゃんの方がいいって…
あっ!ごめん、もう電話切るね?
場所と名前 メールしとくから
じゃあ よろしくっ!』

「あ…はい」

なんだかバタバタしてたな…
相葉さんらしいと言えばらいしけど

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