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take a breather

第2章 今宵あなたと…

「今夜はスーパームーンです
櫻井さん、もうご覧になりましたか?」

「いえ、まだです
帰りに見上げたいと思います」

今日の生放送で得た情報

中継で見た月は本当に真ん丸で大きくて黄金色に輝いていた

「お疲れさまです」

着替えを終えてマネージャーの運転する車で我が家へ向かう

車窓から見上げる月は、先程の映像よりも何倍も美しく、心を惹き付ける

「あ、そこのコンビニで車止めて」

「え?ここですか?
コンビニならもう少し近くにありますけど」

確かにそこは家から最寄りのコンビニではない
しかも買い物をするわけでもない

折角のスーパームーンをもう少し堪能したいだけ

「ん、いい。そこで降ろして
そこから歩いて帰るから、もう帰っていいよ」

「こんな夜更けに大丈夫ですか?」

「こんな夜更けだから大丈夫なんだろ」

ファンの人たちに見つかるような時間帯じゃない

たまにはのんびりと歩くのもいいだろう

「じゃあ、お気をつけて」

「お疲れ」

片手をあげ、マネージャーの車を見送った。

ここからだと家まで10分くらいか?
さすがにこの時間じゃ、車通りも少ないな

月を見上げながらゆっくりと歩みを進めた

月の光はあの人を思い出させる

柔らかくて…優しくて…全てを包み込んでくれるあの人を…

「今度は事前に調べて一緒に見たいな…」

きっと『すっげぇなぁ!』って感激しそう

芸術家なあの人のことだ
美しいモノには心を囚われてしまうだろう

それはそれでちょっと悔しいけどね…

俺以外のモノに夢中になるなんて

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