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短編集?

第3章 精子ドナー


11番

と書かれた部屋の扉をノックすると

わずかにドアが開く

パンツ一枚、ほぼ全裸の状態で廊下に立っているのは

少し間抜けな格好だ

「入って」

少しツリ目の美人な女性が

半身で立っていて、中に招き入れられた

白い、狭い部屋

スラっと細い華奢な

ショートカットの青い下着をつけた女性

事前に医者とカウンセラーから聞いていたのは

最終的に精子を提供する相手が

妊娠を望む女性であること

個人情報保護の厚い壁で

それ以外は何も聞かされていない

朝の9時半に突然呼び出されて

ここへやってきた

ドナー登録をしていると

そういうこともある

透明なガラスで仕切られたトイレとシャワー室

歩いて2,3歩でたどり着けるダブルベッド

そして、小さなテーブルと椅子が2脚

小さめのビジネスホテルの一室、というよりはラブホテルのような作り

さっと室内を見渡しても

コンドームや精子保存パックはない

もしあった場合は、精子を保存して第三者へ渡すこともできる

だけれど、目の前にいる女性はそれをしない

「何を考えてるか、当ててあげましょうか」

フラットな、感情のこもっていない声が

彼女の唇からする

「私が妊娠を希望している精子ドナーを受ける女性か、でしょう?」

Yes,Noを言う前に

彼女がそれを言った

「だけど、残念

私じゃないわ

でも、依頼主はオーガニックによる受精が希望なの

彼女はこの隣の部屋で待機してるわ

あなたが私に吐き出す精液を」

オーガニック

この業界では珍しいことだった

コンドームやオナニーホールを使わずに

人為的な射精を経ず

女性の膣に射精して精液を採る方法

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