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友達のままがいい

第6章 未来


「やっぱり…泣くのな?」

唇を離した則ちゃんは静かに口を開いた。
彼に言われて泣いていることに初めて気がついた私は、何も言えなくてただ涙を流すしかできなかった。
その涙を拭きとってくれるその手の温もりが私の気持ちを荒立てる。

「…ごめん…また…傷つけたよな…あの時みたいに…」

その言葉に、則ちゃんもまた同じ記憶を辿っていたんだと分かった。
誰にも話せずに来た私の想いと共に起こった出来事。
慶介や美鈴にさえ話していない秘密事…

「泣くなよ…」

流れ落ちる涙を何度も拭い、辛そうに顔を歪ませる則ちゃんの絞り出す言葉に、私はただ首を横に振るしかできなかった。
言葉にすれば今まで隠し通してきた想いを口にしそうで、口を噤むしかなかった。


―――――言葉にしないと伝わらない。


則ちゃんが結婚したら私の居場所がなくなると慶介に言われたけど、長年心の中に押しとどめてきた想いを今更簡単に開放できなかった。

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