テキストサイズ

俊光と菜子のホントの関係

第7章 『少しだけでも……』



「……なぁ、菜子。ところで、何でその浴衣にしたんだ?」


 なんか会話をしようと、菜子に質問をした。


「あ……えっとね、いつも明るくて可愛い柄ばかりだったから、たまには落ち着いた物を着てみたいなーって。それで、これが目についたんだー」


 菜子はいつもの無邪気な調子で、浴衣を選んだ経緯を説明した。


「そっか……」


 菜子も年頃の女の子だし、いろいろとオシャレして楽しみたいよな……。

 ルンルンとする菜子に、心がだんだんと癒されてきた。


「で……どう、かなぁ? コレ」


 と、菜子がいつものように訊いてきた。

 さっきは言えなかったけど、気持ちが落ち着いた今なら――


「うん……ちゃんと菜子に似合ってる」


 と、秘めた想いを噛み締めながら伝えた。



「えへへー、やったぁ。嬉しいー」



 それだけでも菜子は喜びを見せ、それがまた、俺をドキドキさせ――プラス、良からぬ欲がムラッとしかかった。


 って、あぶねぇっ!


 危機を感じ、前を歩く智樹と明里ちゃんの存在を意識することで、ムラッと感を完全にかき消した。


 セ、セーフ……危なかった……。本当に智樹と明里ちゃんが一緒で良かった。


 もし……二人だけで来て、そんな薄めの浴衣姿で、こんなに可愛く照れ笑いされたら俺――


 抑えきれなくて、手……出してたかも。


 これだから男はっ……。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ