テキストサイズ

Kissシリーズ

第35章 クリスマスのキス

わたしの言葉を聞いて、しばし考えた後、肩を竦めた。

「―だな。ムリに全部を合わせていたら、楽しくないかもな」

「そうそう」

それで思い出した。

コイツは楽しそうにはしないものの、グループの集まりとかは必ず参加していたことを。

そんなのきっと、グループ内ではコイツだけだ。

他のみんなは何らかの理由で、いない時だってあるのに。

そう考えると、一応コイツなりに、仲間に気を使っていたのかもしれない。

「…で? わたしに相談したいことは終わった?」

「別に相談しようと思って、つけていたワケじゃないが…」

「つけていた自覚はあったのね?」

まあ無かった方が、怖いけど。

「んじゃ、何でつけてきたのよ? わたしは『一人でジックリ楽しみたい』って言ってたのに」

思わず恨みがましく言ってしまう。

ずっとつけられていたせいで、あまり集中できなかった。

…まあイヤってワケではなかったから、今まできたんだけど。

「つけていたのは悪かった。…ただ、タイミングが見つからなかっただけで」

「タイミング? 何の?」

首を傾げるわたしを真正面から見つめ、アイツは言った。

「告白」

「何の?」

「愛の」

…何だろう?

このぶつ切り会話は。

そして甘くもないのは何故?

ここはイルミネーションが煌びやかな公園の中。

しかもクリスマスで、雪までチラホラ降り始めている。

ホワイトクリスマスに告白されるなんて、普通の女の子ならば、心ときめくシチュエーションなのに。
…ああ、わたしは普通の女の子じゃなかったか。

そして目の前の男も、普通じゃなかった。

なら、こういう雰囲気も当たり前か。

「…って、納得できるかぁ!」

いきなり怒鳴ったわたしを見て、アイツはびくっと体を震わせる。

わたしは眼をつり上げ、アイツの目の前まで足音高く近付いた。

「もう少し、空気読んでよ! せめてイルミネーションが一番綺麗な場所で言うとかなんとか、あるじゃない!」

「だっだから言い出せなかったんだ」

「不器用にもほどがあるわよ!」

どこまで不器用な男なんだ! コイツは!

「…でも、わたしのどんなところが良いのよ? こんな可愛げのない女、滅多にいないけどさ」

「ん~っと。そういうハッキリしているところが良いんだ。お前は自分の気持ちに、嘘をつかないだろう?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ