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Kissシリーズ

第35章 クリスマスのキス

この先の公園の出口までなら、同じ所に向かっていても、不思議じゃないか。



―と思っていたのに。

アイツは何故かずっとわたしの後ろを歩いていた。

わたしが立ち止まると、アイツも立ち止まる。

そして歩き出すと、歩き出す。

早足にしても、わざと遅くしても、歩調を合わせてくるのだ。

だから公園を一周した後、人の少ない場所まで移動した。

そして体ごと振り返り、アイツを睨み付ける。

「…アンタ、何で人の後、ついてくるのよ? 不気味で気持ち悪いんだけど」

ハッキリと言っても、アイツは相変わらず無表情。

「…お前って、本当に気持ち良いぐらい、ハッキリと言うよな」

「言わないとストレスがたまるもん。でも一応協調性はあるわよ? それに友達付き合いも嫌いじゃないし」

「そうか…」

「でもアンタはムリしてんじゃないの?」

わたしの言葉に、弾かれたように顔を上げたアイツに、わたしの方が驚いた。

「なっ何よ?」

「何で…そう思うんだ?」

「だってアンタ、楽しそうじゃないもん」

問われたから、わたしはハッキリと自分の思っていることを言う。

「普通、友達といて楽しかったら、そういう顔するでしょう? でもアンタはずっと面白くなさそうな顔しているし」

「そうか?」

「うん。まっ、人と合わせられない時って必ずあるもんだけど、アンタの場合、そういうもんでもなさそうだし」

ズバズバ言うと、流石に傷ついたのか、俯いて黙ってしまった。

「…えっ、えっとぉ…。言いすぎた?」

苦笑いしながら首を傾げて言うと、首を横に振って否定したので、一安心。

「確かにそうだな、と思っただけだ。俺は人付き合いというものが、うっとおしくてしょうがないと思っているし」

「なら何でグループん中にいるのよ?」

「そうしないといけない、みたいな空気があったから」

「それはまあ…何となく分かるけど」

今時、一匹狼を気取っても、周囲からは浮いている存在だとしか思われない。

なら多少ムリしてでも、誰かといたほうが良いということもある。

…けどコイツの場合、否定が態度にまで出ているから、問題なんだろうな。

「まあ…アレよ。ムリに合わない時は、わたしみたいに断ったら? 全部を全部、合わせてたら、体も心も持たないでしょう?」

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