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Kissシリーズ

第35章 クリスマスのキス

触れるだけの一瞬のキスだったけど、アイツは顔を真っ赤にするぐらい照れる。

触れた唇は冷たかったけど、心も体も火照るぐらいに熱くなっていく。

「…何よ? 恋人がクリスマスにキスしたら、おかしい?」

だけど照れ臭くて、思わずぶっきらぼうな言い方になってしまう。

「お前なぁ…。キスなら、それこそ景色の綺麗な所で、なんじゃないのか?」

「やぁよ。だって同じようにキスしている恋人がいっぱいいるもん。人に見られるなんて、イヤ」

これは本心。

たくさんのキスシーンを見ながら、二人の世界に浸れるほど、まだわたし達の仲は深くないから。

「まったく…」

アイツは苦笑しながら、それでもわたしを抱き締めてくれる。

「お前のペースには、ホントまいるよ」

「そんなわたしを選んだアンタが悪い!」

「ははっ。そりゃそうだな」

頭上で笑うアイツの顔を見たくて、わたしは再び顔を上げる。

すると今度はアイツの方からキスしてきた。

「んっ…」

「―好きだよ。マイペースに生きているお前が、誰よりも好きだ」

「うん…。わたしも不器用なアンタが好きよ」

間近で見つめ合いながら、わたし達は笑いあった。

景色が白く染まる中、それでもわたし達の熱は上がっていく。

「あっ、それともう一つ、言っておくことがあったわ」

「何だ?」

わたしはアイツの頭を抱え、耳に唇を寄せた。

そしてそっと囁くような声で、言う。

「―メリークリスマス」

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