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Kissシリーズ

第36章 ほのぼのしたキス

「帰って来れないって、どーゆーことよっ!」

『だっだから、こっちにも付き合いってモンが…』

こっち、と言う言葉に、涙が浮かんだ。

「…あっそ。じゃあ、ね!」

ピッ! とケータイを切って、ベッドの上に投げ付けた。

「一ヶ月も会えないとは、何なのよぉ!」

叫んだ後、深く息を吐いて、冷静になった。

…分かっているのよ、本当は。

今、わたし達は高校三年生。大事な時だ。

そんな大事な時に、遠距離恋愛ってのは正直辛い…。

イヤでもイライラしてしまう。

「でも…好きだしなぁ」

付き合って一年目で、彼は親の仕事の関係で、遠くへ引っ越してしまった。

それこそ新幹線を使わなきゃ行けない所へ…。

彼はバイトしてお金を溜めて、こっちへ来てくれる。

わたしに会いに…。

なのにわたしときたら。

「はぁ…。受験ストレス、溜まってるなぁ」

本当はわたしもバイトをして、彼の所へ行きたかった。

でも彼はこっちに帰りたいって言うから、ただただ待つばかりの彼女になってしまった。

そう…わたしには待つことしかないのに…。

「なのに、あのアホウ!」

最近では向こうでできた友達付き合いがあるとかで、結構会うのをキャンセルしてくる。

そのたびに、胸が張り裂けそうな思いをしているのはわたしだけなの?

もう、別れた方が良いのかな?

ついイライラして、彼に当たってしまうことも増えてしまった。

自分で自分がイヤになる。キライにも…なるってもんよ。

せっかくの週末も、行く所は図書館だけか。…しかも一人で。

「まっ、しょーがないか…」

最近では立ち直りも早くなる。

ケータイを拾うと、彼からは何も来てなかった。

向こうも、もういい加減うっとおしく思っているのかもしれない。

それでも…良いと思えてしまう自分がイヤだ。

彼のことは、好き、なのに…。

モヤモヤした気持ちを晴らしたくて、わたしは部屋を出た。

…ケータイを置いて。

週末の公園は結構賑わっている。

わたしは奥へと進み、とある場所を目指す。

この公園は山一つを使って作られたもの。

だから奥の方に行くと、街を一望できる秘密の場所がある。

その場所は彼に教えてもらった。

何かとイラ立ちやすいわたしを心配して、教えてくれた。

彼がいない時も、たびたび訪れてた。

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