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Kissシリーズ

第36章 ほのぼのしたキス

間近で怒鳴られたけど…嬉しい。

「最近になって、ようやく成績が上がってきてさ。でも…同級生に勉強習ってるなんて、カッコ悪くて言えるかよ…」

あっ、付き合いって、そういうこと。

「だから…もうちょっとだけ、ガマンしてくれ。大学は絶対合格する! そしたら…!」

彼はわたしの目を真っ直ぐに見た。

「いっ一緒に暮らそう」

「それって…」

「それなら絶対に、不安にさせないだろう?」

涙が自然にボロボロとこぼれた。

「おっおい!」

「…バカ」

涙を拭いながら、わたしは彼にしがみついた。

「バカって…。ああ、そうだよ。オレはバカなんだよ」
そう言って、わたしの頭を撫でてくれる。

やがて涙は止まり、わたしはヒドイ顔で彼を睨み付けた。

「黙っていることも、不安にさせるって、分かってる?」

「あっああ。マジでゴメン」

しゅん…と落ち込む彼の頬を、両手で包んだ。

そして、わたしの方からキスをした。

「…っ!?」

彼の体が一瞬震えた。

けれどそのまま、時が止まったかと思うぐらいに、唇を合わせていた。

彼のあたたかな優しさが、唇から伝わってきた。

「…不安にさせたくないなら、言うこと、分かってるわよね?」

「あっああ」

彼は顔を真っ赤にしながらも、ぎゅうっと抱き締めてくれた。

「お前のこと、好きだ」

「…うん! わたしも大好きよ」



―そしてわたし達は、夕日が沈むまで、そこにいた。

二人で寄り添って、いっぱい話をした。

やがて暗闇が訪れ、わたしは笑顔で彼を見送った。

多くの人の中に紛れ、帰り道を歩きながら思う。

きっと、わたし達の距離は今1番近くなっている。

そう、見上げた月と星が寄り添っているように。

わたしと彼の心も、側にある。

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