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Kissシリーズ

第37章 純愛のキス・1

バタバタと帰り支度をはじめる。

「それじゃ、これからも頑張ってください!」

頭を下げて、扉に向かった。

「…待ちなさい!」

でも腕を捕まれ、そのまま後ろから抱き締められた。

「せっ先生…?」

「…言い方が悪かった」

「えっ?」
「―好きだ」

「……へっ?」

自分でも驚くほどの、気の抜けた声が出た。

「好きなんだ、お前が。だけどオレじゃお前のピアノの才能を潰しかねないから、身を引くことにしたんだ。でもあくまでそれは、ピアノの指導者としての立場だけで…」

わたしは顔だけ振り返る。

先生の真っ赤な顔が、間近に迫る。

「男としては、引くつもりは一切無いからな」

―重なる唇。

先生のあたたかさが、全身に満ちていく。

「ふっ…」

思わず泣き出してしまったけれど、先生が顔中にキスの雨を降らせてくれる。

ぎゅうっと先生に抱きついた。

落ち着いた頃、先生に手を引かれて、再びイスに座った。

「ホントはお前が高校卒業するまで、ガマンしているつもりだったんだ」

「そう…なんですか?」

「ああ、お前がオレのことを好きなのは分かっていたから、気長に待つつもりだったんだ。お前が大人になるまで」

「………はい?」

「まさか、自覚無かったのか?」

「いっいえ、ありましたけど…」

バレてたとは思いませんでした…。

「あれだけ緊張しまくるなんて、好きか苦手かのどっちかだろう?」

「確かに…」

「まっ、音楽の方も気長に待つとするさ」

先生は笑って、肩を竦めた。

「…緊張しないように、精進します。もちろん、恋愛の方も!」

わたしも笑顔で答えた。

だけど…まだ体が緊張している。

本当に延長戦になりそうだ。

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