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Kissシリーズ

第38章 純愛のキス・2

成績もあたしが担当している数学を筆頭に上がったし、めんどくさい役員とかも引き受けてくれた。

だから先生達の間では、評判の良い生徒なんだけど…。

「まだ就職か進学か決まっていない?」

「…いえ、そういうワケでも」

…あたしの目を見ないようにしながら言われてもなぁ。

「えっと、とりあえず二年の時に出してもらった調査書に合った大学のパンフをいくつか持ってきたの。良かったら目を通すだけ、通して見て」

と、教頭先生から押し付けられた大量のパンフを入れた封筒を机に乗せて、ずずいっと押す。

「はっはい」

あまりの多さに、目を丸くするよね?

「でも二年の時は英語が得意だったのよね。三年になってからは数学の方が成績が良くなってくれて、嬉しいわ。何なら理数系の大学の…」

「嬉しい、ですか?」

突然あたしの言葉を遮り、彼が真剣な言葉を出した。

「えっええ、もちろん。あたしの担当する教科だし、数学を好きになってくれるのは素直に嬉しいわよ」

…キライな子の方が多いから。

「…なら、先生はオレに好かれたら、嬉しいですか?」

「えっ? そりゃあ…嫌われるよりは、好かれた方が嬉しいわよ」

「そうじゃなくてっ…!」

彼は前髪をぐしゃっとかき上げ、真っ直ぐにあたしを見てきた。

あっ、コレはヤバイ。

長年、教師をしている勘がささやいている。

話題を変えろ、と。

「オレ、先生のことが好きです。一人の女性として、愛している」

「っ!?」

あまりの直球な言葉に、呼吸どころか心臓まで一瞬止まったわよ…。

でもすぐに冷静に戻らなきゃ!

間を空けちゃダメ。

「そう、あなたの気持ちはとても嬉しいわ。だけどあたしはあなたより15も年上だしね?」

…言ってて、自分でダメージを受けるな。

「でもオレはもう結婚できる歳です」

結婚ときたか…。

「でもご両親の承認が必要よ? 許してくれないわよ」

「説得します! 何年かかっても!」

その間に、キミは卒業するんだけどな~。

…正直なことを言うと、彼のような生徒が今までいなかったワケじゃない。

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