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Kissシリーズ

第38章 純愛のキス・2

でもみんな若かったし、高校を卒業したら、自然と離れていった。

男子校の中での若い女教師。

目立つ存在であるからこそ、今まで教師としてというより、姉のように接してきたのに…。

「でもホラ、教師と生徒って言うのは、ねぇ?」

「オレはあと、半年も経たないうちにこの学校を卒業するから、それも効かない」

ああ、確かに…って、説得されちゃダメだってば!

「でっでも、あなたはまだ、進路決めてないじゃない。ハンパな気持ちじゃ、やっぱり周囲は認めてくれないわよ?」

そう言うと、彼の表情がくもった。

…おや? 妙なところでスイッチを押しちゃったかな?

彼は俯いたかと思うと、しぼり出すように言葉を出した。

「…オレが学生でいるうちは、先生のことしか考えたくなかったから…」

「…はい?」

「だから他のことなんて、考えたくなかった。先のことを考えれば、それは先生のいない生活のことだったから…」

ああ…。

確かに進路を考えるということは、ここを卒業してからどうするということを考えること。

その時、あたしは彼の側にいない。

「…だから進路先を考えていなかったの? 子供の考えねぇ」

ため息まじりに言うと、ムッとしたように顔を上げた。

「ガキだよ、オレ。先生より15も年下だもん」

ぐさっ★

きっ気にしていることを、サラッと言いやがって。

このガキがっ…!

「あのねぇ、先生ぐらいの歳!になると、もうちょっとしっかりした人が好みになるの。自分の感情のままに行動する人なんて、真っ平だわ」

自分でも大人気ない行動だと思っている。

だけど…彼の為だ。

真っ直ぐに人の目を見ることができる、彼の為に。

恋に一途になるあまり、自分をも変えてしまう、あわれで可愛い生徒の為に。

「…じゃあ、ちゃんと進路を決めたら、オレのこと、考えてくれます?」

「進路を決めただけじゃダメ。ちゃんとその通りに生きなきゃ。口だけなんて、何とでも言えるから」

甘えを容赦なく、切り捨てる。

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