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Kissシリーズ

第39章 純愛のキス・3

わたしの好きな人は、とても残酷。

わたしの気持ちを知って知らずか、いつも恋愛相談をしてくる。

「オレ、好きなコできたんだ」

「うん」

「でもさ、どうやったら近付けるんだろう?」

「そういう時はね…」

わたしは笑顔で恋愛相談に乗る。

そうして上手くいけば、心から喜んであげる。

…それが、彼がわたしに求めることだから。

それがわたしの役目だから。

そうすることで彼の側に居続けられるなら、わたしはいくらでも努力を惜しまないから。

辛くないのかと聞かれれば、心が引き裂かれるほど辛い。

でも同時に彼の為になれることが、とても嬉しかった。

「なぁ、今度彼女の誕生日なんだ。プレゼント選ぶの、付き合ってくれよ」

「良いわよ。どこで買う予定?」

彼女へのプレゼントを買いに行く時、彼はいつもわたしを頼ってくれる。

わたしの選ぶプレゼントは、彼女達がスゴク喜ぶらしい。

だから学校が終わった放課後や休日に、彼と二人っきりで出掛けられるのが嬉しかった。

別にやましいことをしているワケじゃない。

こんなのどこにでもありそうなことだ。

今回は休日に、駅前のデパートで買うことにした。

そこのデパートに入っている雑貨店が、彼女のお気に入りらしいから。

「彼女、髪が長かったわよね?」

「うん、腰まで伸びてる。サラッサラのストレート!」

彼は嬉しそうに説明してくれる。

「じゃあヘアピンなんか良いんじゃないかしら? 流行のシュシュとかも喜ばれそうだから、いくつか買ってあげたら喜ぶわよ?」

女の子達の群れの中に入って、いくつか選ぶ。

彼は嬉しそうに、選んでいる。

「あっ、そうだ。お礼として、何か一つぐらい買ってやるよ」

「良いわよ。その代わり、彼女に良いもの買ってあげなさいよ」

「そんなワケにはいかない! ホラ、どれが良いんだよ。選べ!」

何てエラソーなんだろう。

…でもそういう子供っぽいところも、愛おしいと思える。

真っ直ぐで純粋。

わたしの汚い心なんて、何も分かっていない。

そこが憎らしくて、とても嬉しい。

わたしは棚を見上げ、少し高い所に飾ってあるヘアピンを指さした。

「アレなんてどうかな?」

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