テキストサイズ

Kissシリーズ

第39章 純愛のキス・3

ピンク色のラインストーンで作られている2つセットのヘアピン。

「ああ、アレだな?」

彼は背後からわたしに覆いかぶさるようにして、背伸びをして、ヘアピンを取った。

…その時背中に感じた彼の体温と匂いに、心臓が痛いぐらいに高鳴った。

「…ああ、良いんじゃないか? コレにする?」

「うっうん。それにする」

彼は嬉しそうに笑った。

わたしの赤くなる顔に、気付かぬまま。

彼女へのプレゼントと一緒に、ラッピングまで頼んでくれた。

「ほらよ」

「ありがと。嬉しいわ」
…そして、彼女とは上手くいっていたと思っていたのに。

一ヵ月後。

「えっ? 別れた? どうして?」

「ん~。何か付き合ってみて、理想と違ったっていうかさ。まっ、冷めたってカンジかな? 相手もすぐに納得してくれたし」

…彼女とは何度か会っていたけど、幸せそうだった。

なのに二人して、合意して別れた?

にわかには信じられないけど…。

「そう…。まあ元気出してね? また何かあったら、相談に乗るから」

「うん! もちろん! 頼りにしてっから」

…その時のわたしは、上手く笑えていただろうか?

少しでも彼を騙せているのなら、女優モノだ。

しかしそれからというもの、彼は彼女を作ったり、別れたりを繰り返していた。

そのせいか、あまり周囲の評判が良くなかった。

わたしは見兼ねて、注意を何度かしたけれど…。

「だって上手くいかねーもんは、しょーがないだろう? 口で言ったって、分からないもんなんだよ。こういうのは」

確かに恋人経験の無いわたしには、分からないことかもしれないけど…。

そういう言い方、無いと思った。

わたしがこんなに傷付いていること、分からないのだろうか?

こんなに側にいるのに…。

わたしは彼の心が分からない。

彼はわたしの心に気付かない。

…苦しい。

息も出来ないぐらい、苦しい。

やがて彼には遊び人・軽い人という名前が付き始めた。

ハデな遊び方で、近くにいる人も離れて行った。

彼等はわたしにも、早く付き合いをやめるように言ってきた。

彼は変わってしまった―と。

…確かに彼は変わってしまった。

だけど、わたしへの接し方は変わらない。

そういうところが、離れられない原因かもしれない。

だからわたしは、彼のことを好きなままなんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ