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Kissシリーズ

第40章 甘々なキス・1

なのでアタシは早々彼から離れた。

……これが高校一年の時の、彼とのはじめての出会いだった。

月日は流れ、アタシ達は高校三年生になった。

アタシは料理の腕を学校全体に認められ、料理部を設立して、部長を務めていた。

彼はサッカー部の部長として、全国大会に部員達を引っ張っている。

彼のおかげで、サッカー部は毎年全国大会に出られるようになった。

なので自然とアタシはサッカー部への差し入れが増えていき…。

「いつの間にやら、アンタと付き合うようになったと…」

「何1人でブツブツ言ってんだ?」

「過去を振り返っていたのよ。アンタとアタシが出会った頃のこととかね」

鍋に入っているカレーをオタマでかき回しながら、アタシは深くため息をはいた。

彼の両親は共働きで、彼と付き合うようになってからは、彼の家で料理を作ることが多くなった。

今日は学校がお休み。

昼間は街でデートをして、その後彼の家で夕食を作っていた。

「あっ、サラダ何で食べる? ドレッシング? マヨネーズ?」

「タマネギ入りのドレッシング!」

「はいはい」

まるでお母さんと息子の会話だ。

「手伝おっか?」

「結構です! 破壊的料理センスを持っている方に手伝ってもらうと、惨劇が起きますので!」

「うっ…」

彼は料理の才能が無かった。

無かったどころかマイナス。ヒドイという次元じゃない!

一度手伝ってもらった過去があるけど、抹消したい。本気で。

そう思いながら、タマネギをみじん切りにする。

ドレッシングもマヨネーズも、手作りでできる。

彼の食生活は、かなり荒れていた。

だから彼の為に、メチャクチャ料理を勉強した。

おかげで今では有名レストランから、お声がかかるほどだ。

バイト先のファミレスからは、支店長をしてくれないかとまで言われているし…。

「なあなあ。進路、どうするか決めた?」

そう言って包丁を使っているのに、後ろから抱き着いてくる。

「当たり前でしょう? 今がどんな時期か、鈍いアンタでも分かるでしょう?」

「えっ、オレって鈍い?」

「ワリと天然な方向に」

淡々と語りながらも、料理をする手は止まらない。

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