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Kissシリーズ

第8章 ストーカーとのキス

―放課後。

アタシは周囲をキョロキョロしながら、教室から出た。

一年生と二年生では、授業が終わる時間が違う。

今日はいつもとは違って、二年生の方が早く終わる。

だから逃れられるかもしれない!

アタシは注意を払いながら、遠回りして下駄箱にたどり着いた。

時間のせいか、誰もいない。

「良かった…」

ほっとして自分の下駄箱に向かっていると。

「遅かったですね、先輩。遠回りしてたんですか?」

ぴきっと、顔と体が固まった。

後ろを恐る恐る振り返ると、彼がいた。
「どっどうして…!」

「今日は一緒に買い物に行く約束してたじゃないですか? 俺が先輩との約束、破るワケないですよ」

サボりやがった!

「あっあのね!」

アタシはカバンを握り締め、彼に向き直った。

「そっそういうところ、やめてよ! 怖いのよ!」

「そういうところって?」

「ストーカー的なこと! 恐ろしくて夜も眠れないのよ」

「先輩、それって恋ですよ」

「恐怖体験よっ!」

ああ、もう! 

…どうあっても、言うこと聞いてくれない。

「…アタシのこと好きなら、少しは言うこと聞いてくれない?」

「先輩が俺のこと好きになってくれて、付き合うことになったら良いですよ」

悪循環だ…。

「それにね、先輩」

顔を上げると、彼はすぐ間近に来ていた。

そして下駄箱に両手を付き、アタシを逃げられなくした。

「えっ!?」

「俺、先輩の性格を熟知しているんです」

間近でにーっこり微笑んでも、怖いだけ!

「頼まれたらイヤと言えないこととか、強く出られたら引いてしまうところとか」

うっ…! それはアタシの短所だ。

「だから俺は先輩の弱いところをついているんです。何があっても、先輩のこと諦めたくないから」

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